3D空間に線を作り、
クルマの印象を緻密に構成していく。
クルマのスケッチを3次元の立体にする仕事をしています。立体にするためには2つの方法があって、粘土を削って形を作る方法と3Dソフトを使って作る方法があります。自分は後者で、CADを使って量産機種のエクステリアを作ることと、CGを使ってクルマが外を走っているイメージ動画の制作を担当しています。
CADを使った作業では、エクステリアデザイナーと一緒に決めた方向性をもとに、線を描き、面を作りながらクルマの外装を構成していきます。線というのは奥が深くて、同じ車格、同じサイズ感のクルマでも、面を構成する線の曲率、線のピークの持たせ方などで印象が大きく変わります。魅力ある形を生み出すため、スケッチの良さをくみ取りながら、立体化しても破綻することの無い線をいかに手際よく出せるか。私は神の線を探す仕事だと思って毎回挑んでいます。
CGを使った動画制作では、実物を見せられないからこそ、実際の道を走っているイメージが膨らむものを目指しています。たとえば郊外に住む人を対象にしたクルマなら、走らせる道の端に草木を生やした方がいいなとか、リアリティを追求していく楽しさがあります。
やりたいことを尊重してくれる。
だからこそ当事者意識が強くなる。
入社する前も後も、知名度があって、歴史もある大きな会社という印象は変わっていません。イタリア(トリノ)にデザインセンターがあり、大きなシェア率を誇るインドでももちろんデザインをしているので、これから入る人にとっては海外での挑戦も多い、スケールの大きな会社であることを実感してもらえると思います。
一方で社内はすごく自由。自分はこのギャップがすごく好きです。具体的には「デザインはこうじゃなきゃいけない」とか「スズキだからこうでなければ」という縛りが少なく、やりたいと思ったことを尊重してくれる風土があります。たとえば自分はデジタルモデラーという職業ですが、モデルを作るだけでなく、エクステリアデザイナーと一緒に外観の方向性を決めることもしています。クルマづくりの上流工程にも関われるうえに、一緒に仕事をしていく仲間が1人のプロとして見てくれる。「自分たちのチームがこのクルマを作っているんだぞ」と当事者意識が強くなります。
色々なクルマをひたすら見る。
自分の中の引き出しを増やして、
壁を乗り越えていく。
仕事をしていて一番苦しいのは、思い通りの形がなかなか作れないとき。何回も作っては直して「もっとかっこよくできるよね?」と自問しています。タイムリミットが迫っている中で、自分が作っているものをどう着地させていくか。これが本当に難しいです。壁を乗り越えるために、今はとにかく色々なクルマをよく観察して、自分の中の造形表現の質や幅を広げることにチャレンジしています。
活躍している先輩は、みんな頭の中にクルマや造形の知識がたくさんあって、コンセプトの理解が深い。スズキでは社内の参考車や、3Dデータでも様々な車種を自由に見ることが出来るので、気になるところがあればすぐに確認するようにしています。仕事柄、街中のクルマも気になって見ることが多いので、そこでも「このクルマはこういった面で構成されているのか」と知識を取り込んで、新しい表現ができないか実践しているところです。作ったデータは上司や先輩から直接フィードバックをもらうようにしています。やっぱり、たくさんのクルマを作ってきた方々なので、良い点や改善点がその場で出てくるのがすごい。「もっとできるようになりたい」という気持ちが強くなります。
フィルムカメラに夢中。
日常の景色を通じて、あらゆる角度で
ものを見ることを実践中。
学生のときからカメラが好きです。社会人になってからはフィルムカメラにハマっています。写真は撮る角度によって見え方が大きく変わるもの。立って撮った一枚としゃがんで撮った一枚では、切り取られた世界がまったく異なります。低い位置で撮ると、いつもの景色が急に迫力のあるシーンに見えるのが面白くて、日常の景色をあらゆる角度でパシャパシャ撮っています。クルマも同じで、角度によって「同じもの?」と思うくらい雰囲気が大きく変わることがあります。魅力的な一台を目指すためには、デザイナー自身が普段から、いろいろな角度でものを見ることを実践していかないといけないです。写真は楽しみながら視野を広げるという点で、すごくいい練習の機会になっています。